皆さんご存じ長野県。広大な県域は豊かな自然と文化、観光資源に恵まれ、春は花見に、夏は避暑地として、秋は紅葉狩りに、冬はスキーリゾートや温泉地として、日々多くの来訪者を引き寄せてやみません。
関西の方or信州ネイティブの方にはピンと来ないかもしれないのですが、首都圏において長野県というのはリゾート地あり、秘境あり、地元グルメありと三点揃った完璧な観光地で、「旅は信濃に始まり信濃に終わる」という諺もあるくらいです(諸説あります)。むろん、昨今のコロナ鍋においては信州に旅行する無遠慮な首都圏民たちが感染を広め、長野の医療リソース、福祉、血税その他諸々を圧迫していることも直視すべき事実でありますが……。
ところでですね、
このエリアって一体何があるんでしょう? 諏訪と飯田の間、木曽山脈と赤石山脈に挟まれたこの地域『伊那谷』には、あまり全国的に知られた観光スポットが無いように感じます。そこで一般社団法人の運営する伊那谷観光サイトを調べてみたのですが、
丁寧に作られたサイトなんですが、要は特に何も無いらしいんですね。いやこれは多くのスポットを平等に取り上げないといけない観光協会的大人の事情ゆえ仕方ないんですけど、このページを見る限り、割とどこにでもあるようなスポットしか目に入りません。
否そんなはずはない。だって長野県だぞ? 何でもあるに決まってるじゃないか。
憤慨した私は、この地域について微妙に徹底的に調査し、最低限見るべきであろうものを纏めました。それが以下のものです。
そう、伊那市は工業の町であると同時に、居酒屋の町としても知られています。Googleマップで駅前の飲食店を調べたとき、そのほとんどが『居酒屋』『バー』であったときの衝撃たるや。
首都圏一円にしても、地方都市にしても、人口流出やロードサイド店舗への移行、さらにはコロナ禍が拍車をかけてチェーン店ばかりになった地域は数多いです。そんな時世、この個人飲食店の豊かさは特異な部類ではないかと。特に入舟交差点近くの密集具合は、10万人規模の都市圏では結構珍しいと思います。逆に、旅行者にとっては結構敷居の高い店も多いかもですね。
また、ここ伊那には、「レトロ伊那」をキャッチフレーズに、「古の歓楽街」的性格を強調するような内容の看板が立った駐車場がいくつかあります。写真はちょっと撮り損ねたんですが。まあ、今時の若者、昭和の歓楽街風情に素朴に憧れる層がどれくらい居るのか……?と疑問に思う点もあります。あるのですが……実際に歩いた伊那の街はその辺のオバチャンがブラブラ歩いていたり、若者が仲良さそうに話していたりと、そう治安悪そうな雰囲気も感じず、むしろ暖かな人情が形を変えて現れたものなのかとも思いました。
子育てに優しい自治体としても知られる伊那市にとっては「裏の顔」かもしれませんが。調べると、ライブハウスなども多く、結構独自の音楽シーンが発展していたりもするらしいですね。
商店街を横切る入舟の踏切。国鉄線としては異例でしょう。線路側にはこの付近で短い33パーミルの急坂が存在します。かつてこの区間の飯田線は地方私鉄『伊那電気鉄道』が建設したのですが、その面影がこう些細な一枚からも感じられます。
伊那市駅から伊那北駅までの間歩きましたが、こぢんまりした良い踏切が多かったです。ちなみにここ一帯はバー・スナック街で、街中にはカラオケで歌うお姉さんの声が響いておりました。
ちなみに、前述しましたが、この伊那市には名物料理「ローメン」が存在します。これがなかなかの曲者で、基本的に蒸した中華麺を羊肉で和えた料理なのですが、スープを持つものと持たないものとがあり、羊肉の代わりに豚肉を使うバリエーションも存在します。というかそもそも「ローメン」は、伊那の外部の人には「別に旨くもない名物」と認知されているらしく、よって誰も店を出しません。伊那谷北部以外にそれを売る店はほとんど存在せず、伊那の外でネイティブローメンを食べるには、1社が土産品として販売しているインスタントローメン(安くない)を買うしかありません。まあ、都内でも伊那出身の方が運営する居酒屋では食べられたりするらしいのですが……。まあGoogleマップで「ローメン」と検索してみてください。絶望します。
……ということで伊那に行ったら是非ローメンを食べてみたかったのですが、あいにくお盆明けの深夜という時期でしたので店は閉まっておりました。私は断腸の思いでガストに入店し、当てつけのように「海の幸丼」を夕食としました。うううきわめて残念です。次伊那に行くときは必ずや。
一泊した翌朝。
……伊那市、要は何もないのでぶっちゃけ二回目は来ないつもりで来ましたが、実際伊那を歩いてみると大変魅力的な土地で、一泊程度ではその魅力の3割も知らずに立ち去るようで惜しい思いです。観光する場所ではありませんが、なんて言うのかな、時を過ごす場所ではあると思います。
伊那編 おわり
次は駒ケ岳ロープウエーに乗る回です
関西の方or信州ネイティブの方にはピンと来ないかもしれないのですが、首都圏において長野県というのはリゾート地あり、秘境あり、地元グルメありと三点揃った完璧な観光地で、「旅は信濃に始まり信濃に終わる」という諺もあるくらいです(諸説あります)。むろん、昨今のコロナ鍋においては信州に旅行する無遠慮な首都圏民たちが感染を広め、長野の医療リソース、福祉、血税その他諸々を圧迫していることも直視すべき事実でありますが……。
ところでですね、
このエリアって一体何があるんでしょう? 諏訪と飯田の間、木曽山脈と赤石山脈に挟まれたこの地域『伊那谷』には、あまり全国的に知られた観光スポットが無いように感じます。そこで一般社団法人の運営する伊那谷観光サイトを調べてみたのですが、
丁寧に作られたサイトなんですが、要は特に何も無いらしいんですね。いやこれは多くのスポットを平等に取り上げないといけない観光協会的大人の事情ゆえ仕方ないんですけど、このページを見る限り、割とどこにでもあるようなスポットしか目に入りません。
否そんなはずはない。だって長野県だぞ? 何でもあるに決まってるじゃないか。
憤慨した私は、この地域について微妙に徹底的に調査し、最低限見るべきであろうものを纏めました。それが以下のものです。
- 千畳敷ロープウェー(日本一高い所を通るロープウエー)
- 伊那市の居酒屋街と、伊那でしか食べられない謎の料理『ローメン』
- 「かんてんぱぱ」や、飯田市特産袋菓子が並ぶ地元のスーパー
- JR飯田線(鉄オタの間では飯田線を完乗したかどうかでヒエラルキーが数段違うため)
ごめんなさい 1. 以外はマトモなスポットが思いつきませんでした。だってネットを見る限り、「高遠(桜が有名らしいが行くのは8月)」とか「かんてんぱぱガーデン!(食品会社の工場に隣接した庭)」とか「大芝高原!(立派な自然公園らしいが駅から遠い)」とかしかなかったので……。
とにかく行く場所は決めましたので、あとは家族旅行の行き先を諏訪にするよう誘導し、家族旅行から突如私だけ現地解散し、宵の岡谷駅から一人飯田線に乗り込むだけです。詳しい経緯は省きますが、このプランは遂に成功し、私はガラ空きの遅い飯田線に乗って、前日に予約した伊那市の宿を目指すことができたのです。首都圏に住んでいる限り、諏訪や軽井沢や長野の威光に隠れた伊那谷なんてまあ行きませんから、ここから先は神秘の地域です。
……とまあ、内心若干バカにした調子で伊那谷に入り込んだ私なのですが、飯田線での伊那谷移動はオタク的にはかなり楽しいことに気が付きました。地形の関係で車窓は常に広々とし、列車は大河天竜川と断層帯の作り出す複雑な地形を縫うように進みます。調べると、この辺りは諏訪盆地に由来するような機械メーカーの拠点が多く、経済的にも恵まれ、人口流出は少なく、若い移住者は多いとのこと。飯田線といえば、東北ローカル各線と同様『桃太郎電鉄』において赤マスだらけにされるという風評被害を受けているわけですが、実際にはそれなりに豊かな地域であるように感じました。まあその豊かさを支えているのは多分飯田線ではなく中央道の方だと思いますが。
伊那市駅。小規模、至極シンプルな2線駅だが、名実ともに伊那市の中心駅でもあります。伊那市は伊那谷北半分の中心都市で、10万人規模の都市圏を抱えます。宝島社集計の「住みたい田舎ランキング」最上位クラス常連の町としても知られており、ありていに言えば、何らかの魅力があることが予想されます。よって宿もここに取りました。
とにかく行く場所は決めましたので、あとは家族旅行の行き先を諏訪にするよう誘導し、家族旅行から突如私だけ現地解散し、宵の岡谷駅から一人飯田線に乗り込むだけです。詳しい経緯は省きますが、このプランは遂に成功し、私はガラ空きの遅い飯田線に乗って、前日に予約した伊那市の宿を目指すことができたのです。首都圏に住んでいる限り、諏訪や軽井沢や長野の威光に隠れた伊那谷なんてまあ行きませんから、ここから先は神秘の地域です。
……とまあ、内心若干バカにした調子で伊那谷に入り込んだ私なのですが、飯田線での伊那谷移動はオタク的にはかなり楽しいことに気が付きました。地形の関係で車窓は常に広々とし、列車は大河天竜川と断層帯の作り出す複雑な地形を縫うように進みます。調べると、この辺りは諏訪盆地に由来するような機械メーカーの拠点が多く、経済的にも恵まれ、人口流出は少なく、若い移住者は多いとのこと。飯田線といえば、東北ローカル各線と同様『桃太郎電鉄』において赤マスだらけにされるという風評被害を受けているわけですが、実際にはそれなりに豊かな地域であるように感じました。まあその豊かさを支えているのは多分飯田線ではなく中央道の方だと思いますが。
伊那市駅。小規模、至極シンプルな2線駅だが、名実ともに伊那市の中心駅でもあります。伊那市は伊那谷北半分の中心都市で、10万人規模の都市圏を抱えます。宝島社集計の「住みたい田舎ランキング」最上位クラス常連の町としても知られており、ありていに言えば、何らかの魅力があることが予想されます。よって宿もここに取りました。
そう、伊那市は工業の町であると同時に、居酒屋の町としても知られています。Googleマップで駅前の飲食店を調べたとき、そのほとんどが『居酒屋』『バー』であったときの衝撃たるや。
首都圏一円にしても、地方都市にしても、人口流出やロードサイド店舗への移行、さらにはコロナ禍が拍車をかけてチェーン店ばかりになった地域は数多いです。そんな時世、この個人飲食店の豊かさは特異な部類ではないかと。特に入舟交差点近くの密集具合は、10万人規模の都市圏では結構珍しいと思います。逆に、旅行者にとっては結構敷居の高い店も多いかもですね。
また、ここ伊那には、「レトロ伊那」をキャッチフレーズに、「古の歓楽街」的性格を強調するような内容の看板が立った駐車場がいくつかあります。写真はちょっと撮り損ねたんですが。まあ、今時の若者、昭和の歓楽街風情に素朴に憧れる層がどれくらい居るのか……?と疑問に思う点もあります。あるのですが……実際に歩いた伊那の街はその辺のオバチャンがブラブラ歩いていたり、若者が仲良さそうに話していたりと、そう治安悪そうな雰囲気も感じず、むしろ暖かな人情が形を変えて現れたものなのかとも思いました。
子育てに優しい自治体としても知られる伊那市にとっては「裏の顔」かもしれませんが。調べると、ライブハウスなども多く、結構独自の音楽シーンが発展していたりもするらしいですね。
商店街を横切る入舟の踏切。国鉄線としては異例でしょう。線路側にはこの付近で短い33パーミルの急坂が存在します。かつてこの区間の飯田線は地方私鉄『伊那電気鉄道』が建設したのですが、その面影がこう些細な一枚からも感じられます。
伊那市駅から伊那北駅までの間歩きましたが、こぢんまりした良い踏切が多かったです。ちなみにここ一帯はバー・スナック街で、街中にはカラオケで歌うお姉さんの声が響いておりました。
ちなみに、前述しましたが、この伊那市には名物料理「ローメン」が存在します。これがなかなかの曲者で、基本的に蒸した中華麺を羊肉で和えた料理なのですが、スープを持つものと持たないものとがあり、羊肉の代わりに豚肉を使うバリエーションも存在します。というかそもそも「ローメン」は、伊那の外部の人には「別に旨くもない名物」と認知されているらしく、よって誰も店を出しません。伊那谷北部以外にそれを売る店はほとんど存在せず、伊那の外でネイティブローメンを食べるには、1社が土産品として販売しているインスタントローメン(安くない)を買うしかありません。まあ、都内でも伊那出身の方が運営する居酒屋では食べられたりするらしいのですが……。まあGoogleマップで「ローメン」と検索してみてください。絶望します。
……ということで伊那に行ったら是非ローメンを食べてみたかったのですが、あいにくお盆明けの深夜という時期でしたので店は閉まっておりました。私は断腸の思いでガストに入店し、当てつけのように「海の幸丼」を夕食としました。うううきわめて残念です。次伊那に行くときは必ずや。
一泊した翌朝。
……伊那市、要は何もないのでぶっちゃけ二回目は来ないつもりで来ましたが、実際伊那を歩いてみると大変魅力的な土地で、一泊程度ではその魅力の3割も知らずに立ち去るようで惜しい思いです。観光する場所ではありませんが、なんて言うのかな、時を過ごす場所ではあると思います。
伊那編 おわり
次は駒ケ岳ロープウエーに乗る回です
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