こんにちは。硫化西部です。
この記事は、2023年冬に書かれ、2024年12月に公開されましたが、2021年のSimutrans Advent Calenderへの寄稿記事ということにします。
3年も遅延させて申し訳ございませんでした。
さて本題です。
Simutransをプレイするうえで、「駅間距離」について考えたことはありますでしょうか。私はあります。いえ、「あります」なんてもんじゃありません。Simutransを開いている間中ずっと考えていると言って良いくらい考えています。
旅客鉄道を考える上で、駅の位置は極めて重要な要素です。駅一つの設置には相当のコストがかかりますし、何よりも鉄道は駅がある場所からしか利用できないからです。
電停や仮昇降場のように、現場判断で流動的に設置された駅もあれば、都市計画路線のように、複数の行政府にまたがる書面によって設置場所を取り決めた駅もあるでしょう。しかしながら、日本国内で、駅の位置を事細かに研究した文献は多くありません(少なくとも地元の図書館にはありませんでした)。こんな重要なことなのに、いざ駅を設置する側の立場になってみると、分からないことだらけです。
とにかく、現実世界の駅間距離を眺めてみましょう。実例がどうであるか眺めるだけです。
以下の地図すべてについて、国土地理院の資料を引用しています。
地図の赤い部分は、総務省の統計による「人口集中地区」を表します。
岳南電車の場合

吉原本町駅の前後に駅が密集していますが、すべて路線の開業と同時に開設されています。
開業当時の集落配置を反映してこのような姿になっているようです。国鉄吉原駅から吉原市街の中心地を結んでいる性格も見て取れますね。
名古屋市営地下鉄の場合

この区間は1970年代の開業時点ですでに宅地化が進展していました。そのためか、なるべく沿線を駅徒歩圏内にするべく、各路線とも、駅間が1km~1.5km程度に揃えられています。
市営交通ということは、税金で賄う公共政策的な性格が強いですので、公平性を保つ目的もあるかもしれません。また、地下駅の建設コストは非常に高額ですので、コストパフォーマンスの観点からも、駅間距離を揃えるメリットは大きいと考えられます。
神戸電鉄の例

これまでの2例と異なり、もっぱら地形が駅間距離を規定している例だと思います。
六甲の山間部は沿線が宅地化されておらず、かつて鈴蘭台駅の南2.2kmの地点に存在した菊水山駅は利用者の少なさゆえに廃止されています。
鈴蘭台~北鈴蘭台間などは線形条件が極めて厳しく(駅間のほとんどが50‰勾配)、駅を設けようにも設けられない事情もあるでしょう。一方、西鈴蘭台駅は周辺の宅地化進展にともない、鈴蘭台西口駅からわずか500m西の地点にもかかわらず、新規に開設されています。
東北本線(塩釜~松島)

塩釜~松島間は東北本線全体でみても、赤羽~浦和間に次いで駅間が長い区間です。開業時からこの駅間距離なのですが、人口密集地にもかかわらず現代まで駅が新設されなかったのは、仙石線の存在がやはり大きかったと思います。仙石東北ラインの開業も相まって、東北本線は本格的に急行線として機能しているといえるでしょう。
長崎電気軌道

長崎電気軌道。新地中華街駅付近に電停が密集しています。この電停付近には、地方都市としては非常に高密度な繁華街が立地します。そんな繁華街において、この電停の数ならば、行きと帰りで違う電停を使う事も出来るでしょう。速度面で劣る路面電車でも、特性を活かしたサービスが行われているとみられます。
中央線快速

都内、中央快速線の、かつては甲武鉄道が建設した区間です。私鉄時代は、中野以西の駅間はかなり長めに取られていましたが(今の中央特快くらい)、国有化時に駅がほとんど倍増しました。そして、国有化後に新設された駅の中には、二駅間のちょうど中間地点に建設されたものが複数あります。
ここは地形も平坦で、沿線に古くからの拠点市街があるわけでもありませんでした(そもそも線路が一直線に引かれているいうことは、古くからの沿線集落をそもそも考慮していないということです)。縛りがない場合、駅は均等に配置されるという事例といえるでしょう。
南武線

南武線の駅間が短い理由は、南武線が太平洋戦争までは私鉄(南武鉄道)であったことも理由なのですが、黎明期の南武鉄道が乗客数の低迷に苦しんだ結果、「駅を大量に設置する」という力業で需要掘り起こしを狙った面も大きいです。当時は駅といっても無人駅ですし、人件費も相対的に安かったという時代背景もあるでしょう。なお、南武線の国有化前は平間~向河原間と武蔵小杉~武蔵中原間にも駅がありました。
まとめ
うーん、面白かったですね(適当)。駅間距離を一つとっても、歴史が見えてきますね。
皆さんも、駅間に一工夫することで、自分の鉄道路線に小さな歴史を作ってみてはいかがでしょうか。
以上、3年遅れの2021年のアドカレ記事でした。
この記事は、2023年冬に書かれ、2024年12月に公開されましたが、2021年のSimutrans Advent Calenderへの寄稿記事ということにします。
3年も遅延させて申し訳ございませんでした。
さて本題です。
Simutransをプレイするうえで、「駅間距離」について考えたことはありますでしょうか。私はあります。いえ、「あります」なんてもんじゃありません。Simutransを開いている間中ずっと考えていると言って良いくらい考えています。
旅客鉄道を考える上で、駅の位置は極めて重要な要素です。駅一つの設置には相当のコストがかかりますし、何よりも鉄道は駅がある場所からしか利用できないからです。
電停や仮昇降場のように、現場判断で流動的に設置された駅もあれば、都市計画路線のように、複数の行政府にまたがる書面によって設置場所を取り決めた駅もあるでしょう。しかしながら、日本国内で、駅の位置を事細かに研究した文献は多くありません(少なくとも地元の図書館にはありませんでした)。こんな重要なことなのに、いざ駅を設置する側の立場になってみると、分からないことだらけです。
とにかく、現実世界の駅間距離を眺めてみましょう。実例がどうであるか眺めるだけです。
以下の地図すべてについて、国土地理院の資料を引用しています。
地図の赤い部分は、総務省の統計による「人口集中地区」を表します。
岳南電車の場合

吉原本町駅の前後に駅が密集していますが、すべて路線の開業と同時に開設されています。
開業当時の集落配置を反映してこのような姿になっているようです。国鉄吉原駅から吉原市街の中心地を結んでいる性格も見て取れますね。
名古屋市営地下鉄の場合

この区間は1970年代の開業時点ですでに宅地化が進展していました。そのためか、なるべく沿線を駅徒歩圏内にするべく、各路線とも、駅間が1km~1.5km程度に揃えられています。
市営交通ということは、税金で賄う公共政策的な性格が強いですので、公平性を保つ目的もあるかもしれません。また、地下駅の建設コストは非常に高額ですので、コストパフォーマンスの観点からも、駅間距離を揃えるメリットは大きいと考えられます。
神戸電鉄の例

これまでの2例と異なり、もっぱら地形が駅間距離を規定している例だと思います。
六甲の山間部は沿線が宅地化されておらず、かつて鈴蘭台駅の南2.2kmの地点に存在した菊水山駅は利用者の少なさゆえに廃止されています。
鈴蘭台~北鈴蘭台間などは線形条件が極めて厳しく(駅間のほとんどが50‰勾配)、駅を設けようにも設けられない事情もあるでしょう。一方、西鈴蘭台駅は周辺の宅地化進展にともない、鈴蘭台西口駅からわずか500m西の地点にもかかわらず、新規に開設されています。
東北本線(塩釜~松島)

塩釜~松島間は東北本線全体でみても、赤羽~浦和間に次いで駅間が長い区間です。開業時からこの駅間距離なのですが、人口密集地にもかかわらず現代まで駅が新設されなかったのは、仙石線の存在がやはり大きかったと思います。仙石東北ラインの開業も相まって、東北本線は本格的に急行線として機能しているといえるでしょう。
長崎電気軌道

長崎電気軌道。新地中華街駅付近に電停が密集しています。この電停付近には、地方都市としては非常に高密度な繁華街が立地します。そんな繁華街において、この電停の数ならば、行きと帰りで違う電停を使う事も出来るでしょう。速度面で劣る路面電車でも、特性を活かしたサービスが行われているとみられます。
中央線快速

都内、中央快速線の、かつては甲武鉄道が建設した区間です。私鉄時代は、中野以西の駅間はかなり長めに取られていましたが(今の中央特快くらい)、国有化時に駅がほとんど倍増しました。そして、国有化後に新設された駅の中には、二駅間のちょうど中間地点に建設されたものが複数あります。
- 西荻窪
- 三鷹
- 国立
ここは地形も平坦で、沿線に古くからの拠点市街があるわけでもありませんでした(そもそも線路が一直線に引かれているいうことは、古くからの沿線集落をそもそも考慮していないということです)。縛りがない場合、駅は均等に配置されるという事例といえるでしょう。
南武線

南武線の駅間が短い理由は、南武線が太平洋戦争までは私鉄(南武鉄道)であったことも理由なのですが、黎明期の南武鉄道が乗客数の低迷に苦しんだ結果、「駅を大量に設置する」という力業で需要掘り起こしを狙った面も大きいです。当時は駅といっても無人駅ですし、人件費も相対的に安かったという時代背景もあるでしょう。なお、南武線の国有化前は平間~向河原間と武蔵小杉~武蔵中原間にも駅がありました。
まとめ
うーん、面白かったですね(適当)。駅間距離を一つとっても、歴史が見えてきますね。
皆さんも、駅間に一工夫することで、自分の鉄道路線に小さな歴史を作ってみてはいかがでしょうか。
以上、3年遅れの2021年のアドカレ記事でした。
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