Simutrans Advent Calender 2024 12/17日の回です
0. はじめに
この記事は、以下の面白くないトピックを、単につなぎ合わせただけの記事です。
今年の私の記事には楽しい話題は一つもありません。身勝手に問題提起をした挙句、まともな解決案を出さずに終わります。誰もが眉間に皺を寄せることになるでしょう。あと最近の私は普通に思考能力が衰えているので文章も乱文化しています。俺を救ってくれ。
その代わりといってはなんですが、2021年のアドカレ記事を今頃投稿しましたので、そちらを読むと少し楽しいと思います。
方やこちらはあまりにも華のない記事ですので、代わりに花の画像を掲載しておきます。(C)いらすとや

というのは冗談で、普通に参加していたNSのスクリーンショットを貼ります。

記事1. OTRPのドキュメント整備の現状
背景
OTRPは今も昔も「日本国内ヘビープレイヤー向けの私家版」でした。ただ一つ昔と違うのは、今のOTRPは、必ずしもStandard版(つまり本家)の上位互換ではなくなっていることです(本家のバージョンアップに追従していない/できていない)。そのため、Standard版からSimutrans沼に入った人間が、OTRPを知った際に「良いね、でも……」と思う可能性は、以前よりかは上がっているはずです。今の時代、たいていの新規プレイヤーはSteam版(つまりStandard版)から入ると思われるにもかかわらず、です。
私は何度かOTRP環境でのNetSimutransに参加しているのですが、複雑なダイヤ管理や増解結、道路の流動調整や、旅客流動の子細な制御など、OTRP特有の高度なプレイテクニックが日々開発され、シェアされています。これは素晴らしいことだと思いますし、他の輸送シミュゲームとも差別化できるところでしょう。しかしながら、2024年現在で、こうしたOTRP特有の知識は、公の場所にあまり見つかりません。一部の個人ブログにとても良いOTRPの解説記事が在ることは認識していますが、各機能を網羅的に扱う場所は、まだないはずです。
ですので、新規層を呼び込んだり、NetSimutrans内の枠を超えてプレイテクニックを共有するためにも、OTRPの解説をワンストップで見られるサイトを整備するのがもっとも良いと思うのです。平たく言いましょう。OTRP解説に、日本語化Wikiを使うべきというのが私の見解です。理由は、「書き手の集めやすさ」と、「更新のしやすさ」の二点です。
日本語化Wikiにドキュメントを整備する意義
書き手の集めやすさ
OTRPのドキュメント整備は、ボリュームも多いし、必要知識量も膨大ですので、正直私一人で片付く話ではありません。ほかの方々が、楽しみながらプライドを持って寄稿できる場所としては、日本語化Wikiが一番ではないでしょうか。
更新のしやすさ
確かにプレイ解説だけなら、動画サイトや個人ブログで行うこともできます。しかし、SimutransやOTRPのバージョンアップが行われ、情報が変わったとき、修正が追い付かない場面も考えられます。
もちろん動画には動画の役割がありますが、「もっとも最新の情報が書かれている可能性が高い場所」として、Wikiという場が必要ではないかと思います。
何年後かは分かりませんが、ひめし氏も人間ですので、いつかはOTRP開発を続けるのが難しくなるはずです。そして、『その時』にOTRPの命運を決めるのは、今いるベテランプレイヤー層ではなく、もっと若い世代、なんなら今Steam版をやっているような層だと思うのです。今OTRPを使っているプレイヤーは、現在のOTRPにある程度満足しているはずです。満足している人からは、改善しようというモチベーションもそれほど生まれないでしょう……これ以上の話は、私ではなく、ひめし氏ご本人の意向で決めるべきだと思うので、書き控えますが。
また、今回の話題からは外れますが、ほかの輸送シミュレーションと差別化できる部分を増やすことも、OTRPの生存戦略の一つかもしれません。いずれにしても、OTRPはひめし氏個人の類稀な能力と情熱によってここまで成長してきたわけですが、これからはプレイヤー総出でOTRPを生存させ、発展させる段階に来ているというのが私個人の意見です。
今後の課題
課題など掃いて捨てるほどあるのですが、一番どうしようもない問題は、これは、作業量が多く、さほど面白くはなく、しかも無報酬で行われるプロジェクトであることです。早い話、「誰もやりたくない」、なんなら私自身もやりたくない作業を、どうやって盛り上げて、楽しく回すかという問題です。
なるべく多くの人が、気楽に書ける状態が一番でしょう。早いうちに日本語化Wikiも体裁を整えたいですし、場合によっては個人ブログ記事のリンク掲載も許可するなどして、ハードルを下げる方向に振りたいところです。様々な個人ブログに散らばってる情報を集めるだけで結構な量になるとは思うので。
また、記事の質を保つためには、「スクリーンショットしながら書いてもらう」ことと、「迷ったら短くする」ことを強調するべきではないかと思います。これにより、最低限の分かりやすさと、誤りのなさが担保できると思うからです。理想論でいえば、最初は質より量で揃えてもらって、あとからどんどん推敲して記事の質を高めていく方法が良いのでしょうが、他人の書いた記事を推敲することは実際には結構抵抗感があることだと思うので(現実に日本語化Wikiも古い情報があまり改稿などされていない)。
あるいは、オン会オフ会、あるいはそれこそアドカレなど、お祭り感覚で書ける企画があれば良いと思うのですが、どうにも思いつかないので、ここはやさしい方から提案をいただけると嬉しいところです。
もう一点、かつて日本語化WikiとOTRPの間に距離があったことは私も存じています。しかし、この件は元々ひめし氏(OTRP開発者)から提案いただいたことですし、日本語化Wiki管理人koa氏からも合意をいただいてもいます(というより、ひめし氏が主導で提案してくれた節が大きい)。ここ5年でゲームを取り巻く状況は大きく変わりましたので、界隈の風習も変えるのが妥当というものでしょう。
むしろ、最近私のほうがなかなか動けておらず、申し訳ないところです。私生活に余裕が出てきたら、ひめし氏や、ほかのOTRPチームや有識者の方々から協力を募りつつ、うまく動かしていければと思っています。
記事2. NetSimutransを面白くするルールとは?
これからNetSimutransのルール制定について語ります。しかし、それが直接読者の役に立つとは思いません。
なぜ役に立たないと思うかというと、誰が参加するかによって、最適なルールは変わるからです。思うに、そもそもルールとは、NetSimutrans参加者間で共有されていないと思われる価値観に対して、ゲームマスターの立場から、統一見解を示すためのツール、というのが私の意見だからです。
例を出せば、仮に「他人の線路をオーバーパスした後に、事後報告をすればよい」と考える人と、「他人の線路をオーバーパスする前に、線路の所有者と協議し、明確に取り決めを結びたい」という人がいた場合に、喧嘩が起きないように、あらかじめ『正解』を決める存在がルールと言えます。逆に、参加者全員がオーバーパスに対して同じ考えを持っている場合は、オーバーパスに関するルールは不要なはずです。シングルプレイにルールは不要です。二人以上でプレイする場合は、複数人の価値観の差分が、ルールになります。
このように、ルールとは、トップダウンで権威的なものではなく、プレイヤー同士の合意事項として、自然発生的に生まれるものだと思うのです。しかし現実のNetSimutransでは、プレイヤー同士の相談だけでルールを決めるには、非現実的な時間がかかります。あるいは、どうしても意見の折り合いがつかない場合もあります。そこで、ゲームマスターが複数の価値観を仲介し、個人の責任で、統一された見解をまとめます。したがって、ルールはコミュニティに依存するものだし、他人が理想論を振りかざして語れるものではありません。
さてルールと一言で言っても、条文の目的によって、運用方法を変えたほうがスムーズです。そこで、ここでは簡単のため、機械的に「権利規定」と「コンセプト規定」と「マナー」に分類して考えてみましょう。
「権利規定」とは、たとえば「他人の駅への接続時には駅管理者と協議する必要がある(協議を要求する権利がある)」とか、「都市に対して人口増加ツールを使ってはいけない(使う権利がない)」など、プレイヤーが可能・不可能なことを定める規定です。「権利規定」の違反者が出た場合、プレイヤー同士の衝突につながる可能性がありますので、なるべく厳密に定めたほうが良い部分かと思います。
「コンセプト規定」とは、たとえば「1990年時点で登場済みの車両を推奨する」とか、「国鉄線を敷設する場合は、極力既存の国鉄駅に接続させる」とか、サーバー全体の美観を保つためのルールを指します。これは違反したところで被害者はいないため、厳密に定める必要は無いでしょう。しかし、このカテゴリは、参加者間で「暗黙の了解」が通用しない可能性が最も高いはずです。ですので、手段は問いませんが、プレイヤー全員がここの規定を納得している状態が望ましいです。ここで納得しない人がいた場合、NetSimutransで最も貴重なリソースである「プレイヤーのモチベーション」を損なう可能性があるからです。
なお、ルールを納得させる手段としては多数決も思い浮かびますが、プレイヤー間の信頼関係がよほど強くない限り、「選ばれなかった側」のモチベ低下が怖いです。逆に、ゲームマスターが一貫した考えのもとで独裁的に決めた方が、責任の所在が明らかになる分、心理的には上手くいくと思います。
「マナー」とは、たとえば「サーバーに繰り返し再接続する際は一定時間間隔をあける」とか、「個人情報を書かない」とか、コミュニティの常識に近いルールです。といっても、ルールは静的なもので、コミュニティの常識はもっと流動的ですから、本来ならばルールに頼らず、プレイヤー間で話し合って解決するのが理想だとは思います。
とはいえ、現実には、マナーを巡ってプレイヤー間の対立が想定される場合もあります。ここで「郷に入っては郷に従え」を要求するのも、ゲームマスターの役目だったりします(ですから、ゲームマスターはヘイトを集めます)。結局、ルールはマナーを守らせるための一手段に過ぎないので、「権利規定」や「コンセプト規定」に多くの時間を割いたほうが良いと私は思うんですけどね。
悲観論ですが、プレイヤー全員が納得して楽しめるNetSimutransは恐らく存在しないでしょう。もし存在したとしたら、それは運営チームの思い上がりか、誰かが無言で我慢することで成り立つ虚構だと私は思っています。ですから、完璧なルールで統治するのではなく、まずはプレイヤー側に成熟した考えを持ってもらって、互いの小さい妥協によって、より大きな面白さを作る姿勢が理想ではないでしょうか。言い換えれば、重要なのはルールの完成度ではなく、ゲームの完成度です。そして、その「大きな面白さ」を増幅させるのが、『ゲーム』マスターにとっての腕の見せ場ではないでしょうか。
たとえば連邦制を取ってみたり、中央に共有大都市を置いてみたり、そういうゲームデザインの妙があれば、本当に面白いNetSimutransは作れると思います。ゲームデザインの定石は私にはわかりませんが、その場にいるプレイヤーが、大勢で集まってわちゃわちゃしたいか、自分専用のエリアでマイペースに開発したいか、そういった好みをヒヤリングしながら作っていくとよいのでは、と思います。一つ具体的に言えることがあるとしたら、「事前に土地を一定の区域に区切っておいて、必要に応じてプレイヤーがその土地を占有できる制度」は、一見合理的であっても、意外と煩雑で面白さを削ぐので、慎重に考えたほうがいいと思いますね。
最後に、私が作った、あまり良くないNetSimutransルールブックを自戒も込めて貼っておきます。仮にも数年前の私が全力で書いたルールなので、今更「どこが悪いか」を書くことはしません。読者の方が、よくないね、と感じたところが、このルールの良くないところです。仮に、よいね、と感じたところがあれば、パクって構いません。
記事3. Simutrans BGMの現状
まずお詫びしたいのですが、Simutransバージョン123以降、私(RykSeb)が作成に携わったBGMについて、意図通りに再生されない楽曲がありました。具体的には48番、49番、50番です。つい先日本家フォーラムに修正パッチを提出しましたので、次回のリリースあたりには修正版BGMが同梱されるかと思われます。待ちきれない方はリンク先の投稿からZIPを落としてください。
もともとの原因は、私が(MIDI規格への理解不足によって)Windows内蔵音源でしか再生できないBGMデータを寄稿してしまったためです。お詫び申し上げます。
2022年ごろまで、Windows版のSimutransは、Windows内蔵音源を介してBGMを再生していました。しかし、Simutransバージョン123以降は、Soundfontという独自の音色定義ファイル(拡張子.SF2または.SF3) を介して、BGMを再生するよう変更されました。私のMIDIが正常再生不能になったのはその時点からと思われます。
…………さて、ここからは、ネガティブで、マニアックで、多くの読者には関係ないであろう話題です。気になる方のみ読んでほしいのですが…………
私のBGMの事を切り離したとしても、最近のSimutransがデフォルトでBGM再生にSoundfontを使う仕様なのは、私的にはあまり評価できません。理由を語ると長いのですが、早い話が、Soundfontには、MIDIを作曲者の意図通りに再生する保証がないのです。
本来、MIDIというのは、複数の楽器メーカーが定めたGM規格に基づく音源モジュール(SC-88など)で再生するのが最も正式です。Windows内蔵音源は、音質こそチープなものの、一応GM規格品から流用された波形データが、GM規格の音量バランスで収録されているのです。他方、Soundfont(特にSF2)は00年代ネット文化において発展した規格なので、若干アングラなデータが混ざっていたり、あるいは音量バランスや音色デザインなどは作成者個人の裁量に任されている部分があります。
別に、Soundfont自体を批判したいわけではありません。ほとんどのSoundFontはWindows内蔵音源よりよほど高音質です。しかし、高音質であることと、高品質であることは違います。Simutransには多くの作者が提供したBGMのMIDIデータが収録されており、それらを作者の意図通りに、あるいは、極力原型を残した状態で再生する為の規格としては、極力GM規格に近い音源を使うべきだと思うのです。
たとえば、現在Simutransに同梱されているPCLite.sf2は、MusescoreというOSSに同梱されているものなので、権利面はさすがに大丈夫でしょう。しかし、音量バランスはWindows内蔵音源とは大きく異なるため、一部のBGMはまったくバラバラの音量で演奏されてしまいます。全53曲中5曲くらいは、ピアノが音割れしたはずです。3曲くらいは、メロディーがほとんど聞こえない音量だったはずです。
私はさきほど「作者の意図通りのMIDI再生」と述べました。作者の意図、という言い方をすると、少し理想主義的に感じる方もいるかもしれません。しかし、仮にあなたが作曲する人だったとしましょう。「Steamに上がっているゲームのデフォルトBGM」が、音割れとか、メロディーが聞こえないとか、何曲もそういう状態で再生されていて、それが数年間も放置されてるゲームに対して、自作のBGMを提供しようと考えるでしょうか……。
本来、SimutransがSoundfont対応したことはハッピーなことです。長らく放置されてきたBGM再生機能にテコ入れが入ったことで、Simutrans BGMへの注目度は一躍高まりました。もしかしたら、私が2018年にBGM提供したことも、きっかけの一つにはなったかもしれないですしね。
しかしながら、現実には今の状況があるわけで、それなら極論、デフォルト再生エンジンをWindows内蔵音源に戻したほうが良かったのでは、と思ってしまいます(Soundfontはオプション選択肢として残せば良いわけですし)。
先に述べた通り、私のMIDIが正常に再生できないのは、99%私の責任です。私が出したMIDIが規格違反なせいです。しかし、規格通りに作られたとみられるほかの48曲まで音量バランスが崩れているというのは、申し訳ないですが、開発陣が(作曲者に相談もせず勝手に)MIDI再生音源を変更したことに責任があるでしょう。
じゃあどうすべきか、という話になるのですが、正直、きれいな代案は挙げられません。
「BGMをWAV/MP3形式にする」と提案されている方もいます。確かにMIDIは古く時代遅れの規格ですし、環境依存で面倒な点も多々あります。
しかしながら、「MIDIをWAV/MP3にする」とは、『変換』というより『編曲』を意味します。誤解を恐れずに言えば、ベートーベンの書いた五線譜を、一枚のCDにするようなものです。もちろん、Timidity++などを使って機械的に変換することも技術的には可能ですが、そうするくらいなら、ユーザー側で音源やSoundfontの差し替えが効く現状のほうが、かえって品質コントロールがしやすいと思います。
理想を言えば、SimutransのBGMをWAV/MP3にするために、一度MIDIの著作権まわりをクリアにした上で、極力GM規格を再現できる音源を入手し、DAWを駆使して取り組めればベストです。私個人的には全然やりたいのですが、53曲という曲数は一人のアマチュアがやるにはあまりにも多いです。最低でもあと2人くらいは、MIDI規格に精通し、かつDAWを扱える人間を集めたいものですが、試しにTwitterで話題に挙げてみたところ、案の定反応なしでした。
一応、自分がWAV/MP3化するにあたっては、この程度のクオリティになるかな、という試作例を挙げておきます。3曲分作るのに所要3時間弱でした。原曲のニュアンスを全部くみ取れている訳では無いですが、少なくとも「まるで別物」というほどではないと思います。
あるいは、非常に折衷的な案を挙げますが、Windows内蔵音源と、Soundfontと、WAV/MP3音源とを、すべて混在して再生できるようにするのが、最も犠牲は小さいでしょう。しかし、当然ながら、曲ごとに音質・音量のばらつきは著しいものになります。それはそれで、ゲームBGMの質としてはいかがなものでしょうか。
今の状況がよくない! と主張してみたはものの、私自身、答えは出ておりません。
本家フォーラムで一言だけ問題提起はしてみたものの、私の代わりに華麗に問題解決してくれる人が現れるはずもないのですよね。
0. はじめに
この記事は、以下の面白くないトピックを、単につなぎ合わせただけの記事です。
- OTRPのドキュメント整備の現状
- NetSimutransを面白くするためのルールとは?
- Simutrans BGMの現状
今年の私の記事には楽しい話題は一つもありません。身勝手に問題提起をした挙句、まともな解決案を出さずに終わります。誰もが眉間に皺を寄せることになるでしょう。あと最近の私は普通に思考能力が衰えているので文章も乱文化しています。俺を救ってくれ。
その代わりといってはなんですが、2021年のアドカレ記事を今頃投稿しましたので、そちらを読むと少し楽しいと思います。
方やこちらはあまりにも華のない記事ですので、代わりに花の画像を掲載しておきます。(C)いらすとや

というのは冗談で、普通に参加していたNSのスクリーンショットを貼ります。

記事1. OTRPのドキュメント整備の現状
背景
OTRPは今も昔も「日本国内ヘビープレイヤー向けの私家版」でした。ただ一つ昔と違うのは、今のOTRPは、必ずしもStandard版(つまり本家)の上位互換ではなくなっていることです(本家のバージョンアップに追従していない/できていない)。そのため、Standard版からSimutrans沼に入った人間が、OTRPを知った際に「良いね、でも……」と思う可能性は、以前よりかは上がっているはずです。今の時代、たいていの新規プレイヤーはSteam版(つまりStandard版)から入ると思われるにもかかわらず、です。
私は何度かOTRP環境でのNetSimutransに参加しているのですが、複雑なダイヤ管理や増解結、道路の流動調整や、旅客流動の子細な制御など、OTRP特有の高度なプレイテクニックが日々開発され、シェアされています。これは素晴らしいことだと思いますし、他の輸送シミュゲームとも差別化できるところでしょう。しかしながら、2024年現在で、こうしたOTRP特有の知識は、公の場所にあまり見つかりません。一部の個人ブログにとても良いOTRPの解説記事が在ることは認識していますが、各機能を網羅的に扱う場所は、まだないはずです。
ですので、新規層を呼び込んだり、NetSimutrans内の枠を超えてプレイテクニックを共有するためにも、OTRPの解説をワンストップで見られるサイトを整備するのがもっとも良いと思うのです。平たく言いましょう。OTRP解説に、日本語化Wikiを使うべきというのが私の見解です。理由は、「書き手の集めやすさ」と、「更新のしやすさ」の二点です。
日本語化Wikiにドキュメントを整備する意義
書き手の集めやすさ
OTRPのドキュメント整備は、ボリュームも多いし、必要知識量も膨大ですので、正直私一人で片付く話ではありません。ほかの方々が、楽しみながらプライドを持って寄稿できる場所としては、日本語化Wikiが一番ではないでしょうか。
更新のしやすさ
確かにプレイ解説だけなら、動画サイトや個人ブログで行うこともできます。しかし、SimutransやOTRPのバージョンアップが行われ、情報が変わったとき、修正が追い付かない場面も考えられます。
もちろん動画には動画の役割がありますが、「もっとも最新の情報が書かれている可能性が高い場所」として、Wikiという場が必要ではないかと思います。
何年後かは分かりませんが、ひめし氏も人間ですので、いつかはOTRP開発を続けるのが難しくなるはずです。そして、『その時』にOTRPの命運を決めるのは、今いるベテランプレイヤー層ではなく、もっと若い世代、なんなら今Steam版をやっているような層だと思うのです。今OTRPを使っているプレイヤーは、現在のOTRPにある程度満足しているはずです。満足している人からは、改善しようというモチベーションもそれほど生まれないでしょう……これ以上の話は、私ではなく、ひめし氏ご本人の意向で決めるべきだと思うので、書き控えますが。
また、今回の話題からは外れますが、ほかの輸送シミュレーションと差別化できる部分を増やすことも、OTRPの生存戦略の一つかもしれません。いずれにしても、OTRPはひめし氏個人の類稀な能力と情熱によってここまで成長してきたわけですが、これからはプレイヤー総出でOTRPを生存させ、発展させる段階に来ているというのが私個人の意見です。
今後の課題
課題など掃いて捨てるほどあるのですが、一番どうしようもない問題は、これは、作業量が多く、さほど面白くはなく、しかも無報酬で行われるプロジェクトであることです。早い話、「誰もやりたくない」、なんなら私自身もやりたくない作業を、どうやって盛り上げて、楽しく回すかという問題です。
なるべく多くの人が、気楽に書ける状態が一番でしょう。早いうちに日本語化Wikiも体裁を整えたいですし、場合によっては個人ブログ記事のリンク掲載も許可するなどして、ハードルを下げる方向に振りたいところです。様々な個人ブログに散らばってる情報を集めるだけで結構な量になるとは思うので。
また、記事の質を保つためには、「スクリーンショットしながら書いてもらう」ことと、「迷ったら短くする」ことを強調するべきではないかと思います。これにより、最低限の分かりやすさと、誤りのなさが担保できると思うからです。理想論でいえば、最初は質より量で揃えてもらって、あとからどんどん推敲して記事の質を高めていく方法が良いのでしょうが、他人の書いた記事を推敲することは実際には結構抵抗感があることだと思うので(現実に日本語化Wikiも古い情報があまり改稿などされていない)。
あるいは、オン会オフ会、あるいはそれこそアドカレなど、お祭り感覚で書ける企画があれば良いと思うのですが、どうにも思いつかないので、ここはやさしい方から提案をいただけると嬉しいところです。
もう一点、かつて日本語化WikiとOTRPの間に距離があったことは私も存じています。しかし、この件は元々ひめし氏(OTRP開発者)から提案いただいたことですし、日本語化Wiki管理人koa氏からも合意をいただいてもいます(というより、ひめし氏が主導で提案してくれた節が大きい)。ここ5年でゲームを取り巻く状況は大きく変わりましたので、界隈の風習も変えるのが妥当というものでしょう。
むしろ、最近私のほうがなかなか動けておらず、申し訳ないところです。私生活に余裕が出てきたら、ひめし氏や、ほかのOTRPチームや有識者の方々から協力を募りつつ、うまく動かしていければと思っています。
記事2. NetSimutransを面白くするルールとは?
これからNetSimutransのルール制定について語ります。しかし、それが直接読者の役に立つとは思いません。
なぜ役に立たないと思うかというと、誰が参加するかによって、最適なルールは変わるからです。思うに、そもそもルールとは、NetSimutrans参加者間で共有されていないと思われる価値観に対して、ゲームマスターの立場から、統一見解を示すためのツール、というのが私の意見だからです。
例を出せば、仮に「他人の線路をオーバーパスした後に、事後報告をすればよい」と考える人と、「他人の線路をオーバーパスする前に、線路の所有者と協議し、明確に取り決めを結びたい」という人がいた場合に、喧嘩が起きないように、あらかじめ『正解』を決める存在がルールと言えます。逆に、参加者全員がオーバーパスに対して同じ考えを持っている場合は、オーバーパスに関するルールは不要なはずです。シングルプレイにルールは不要です。二人以上でプレイする場合は、複数人の価値観の差分が、ルールになります。
このように、ルールとは、トップダウンで権威的なものではなく、プレイヤー同士の合意事項として、自然発生的に生まれるものだと思うのです。しかし現実のNetSimutransでは、プレイヤー同士の相談だけでルールを決めるには、非現実的な時間がかかります。あるいは、どうしても意見の折り合いがつかない場合もあります。そこで、ゲームマスターが複数の価値観を仲介し、個人の責任で、統一された見解をまとめます。したがって、ルールはコミュニティに依存するものだし、他人が理想論を振りかざして語れるものではありません。
さてルールと一言で言っても、条文の目的によって、運用方法を変えたほうがスムーズです。そこで、ここでは簡単のため、機械的に「権利規定」と「コンセプト規定」と「マナー」に分類して考えてみましょう。
「権利規定」とは、たとえば「他人の駅への接続時には駅管理者と協議する必要がある(協議を要求する権利がある)」とか、「都市に対して人口増加ツールを使ってはいけない(使う権利がない)」など、プレイヤーが可能・不可能なことを定める規定です。「権利規定」の違反者が出た場合、プレイヤー同士の衝突につながる可能性がありますので、なるべく厳密に定めたほうが良い部分かと思います。
「コンセプト規定」とは、たとえば「1990年時点で登場済みの車両を推奨する」とか、「国鉄線を敷設する場合は、極力既存の国鉄駅に接続させる」とか、サーバー全体の美観を保つためのルールを指します。これは違反したところで被害者はいないため、厳密に定める必要は無いでしょう。しかし、このカテゴリは、参加者間で「暗黙の了解」が通用しない可能性が最も高いはずです。ですので、手段は問いませんが、プレイヤー全員がここの規定を納得している状態が望ましいです。ここで納得しない人がいた場合、NetSimutransで最も貴重なリソースである「プレイヤーのモチベーション」を損なう可能性があるからです。
なお、ルールを納得させる手段としては多数決も思い浮かびますが、プレイヤー間の信頼関係がよほど強くない限り、「選ばれなかった側」のモチベ低下が怖いです。逆に、ゲームマスターが一貫した考えのもとで独裁的に決めた方が、責任の所在が明らかになる分、心理的には上手くいくと思います。
「マナー」とは、たとえば「サーバーに繰り返し再接続する際は一定時間間隔をあける」とか、「個人情報を書かない」とか、コミュニティの常識に近いルールです。といっても、ルールは静的なもので、コミュニティの常識はもっと流動的ですから、本来ならばルールに頼らず、プレイヤー間で話し合って解決するのが理想だとは思います。
とはいえ、現実には、マナーを巡ってプレイヤー間の対立が想定される場合もあります。ここで「郷に入っては郷に従え」を要求するのも、ゲームマスターの役目だったりします(ですから、ゲームマスターはヘイトを集めます)。結局、ルールはマナーを守らせるための一手段に過ぎないので、「権利規定」や「コンセプト規定」に多くの時間を割いたほうが良いと私は思うんですけどね。
悲観論ですが、プレイヤー全員が納得して楽しめるNetSimutransは恐らく存在しないでしょう。もし存在したとしたら、それは運営チームの思い上がりか、誰かが無言で我慢することで成り立つ虚構だと私は思っています。ですから、完璧なルールで統治するのではなく、まずはプレイヤー側に成熟した考えを持ってもらって、互いの小さい妥協によって、より大きな面白さを作る姿勢が理想ではないでしょうか。言い換えれば、重要なのはルールの完成度ではなく、ゲームの完成度です。そして、その「大きな面白さ」を増幅させるのが、『ゲーム』マスターにとっての腕の見せ場ではないでしょうか。
たとえば連邦制を取ってみたり、中央に共有大都市を置いてみたり、そういうゲームデザインの妙があれば、本当に面白いNetSimutransは作れると思います。ゲームデザインの定石は私にはわかりませんが、その場にいるプレイヤーが、大勢で集まってわちゃわちゃしたいか、自分専用のエリアでマイペースに開発したいか、そういった好みをヒヤリングしながら作っていくとよいのでは、と思います。一つ具体的に言えることがあるとしたら、「事前に土地を一定の区域に区切っておいて、必要に応じてプレイヤーがその土地を占有できる制度」は、一見合理的であっても、意外と煩雑で面白さを削ぐので、慎重に考えたほうがいいと思いますね。
最後に、私が作った、あまり良くないNetSimutransルールブックを自戒も込めて貼っておきます。仮にも数年前の私が全力で書いたルールなので、今更「どこが悪いか」を書くことはしません。読者の方が、よくないね、と感じたところが、このルールの良くないところです。仮に、よいね、と感じたところがあれば、パクって構いません。
記事3. Simutrans BGMの現状
まずお詫びしたいのですが、Simutransバージョン123以降、私(RykSeb)が作成に携わったBGMについて、意図通りに再生されない楽曲がありました。具体的には48番、49番、50番です。つい先日本家フォーラムに修正パッチを提出しましたので、次回のリリースあたりには修正版BGMが同梱されるかと思われます。待ちきれない方はリンク先の投稿からZIPを落としてください。
もともとの原因は、私が(MIDI規格への理解不足によって)Windows内蔵音源でしか再生できないBGMデータを寄稿してしまったためです。お詫び申し上げます。
2022年ごろまで、Windows版のSimutransは、Windows内蔵音源を介してBGMを再生していました。しかし、Simutransバージョン123以降は、Soundfontという独自の音色定義ファイル(拡張子.SF2または.SF3) を介して、BGMを再生するよう変更されました。私のMIDIが正常再生不能になったのはその時点からと思われます。
…………さて、ここからは、ネガティブで、マニアックで、多くの読者には関係ないであろう話題です。気になる方のみ読んでほしいのですが…………
私のBGMの事を切り離したとしても、最近のSimutransがデフォルトでBGM再生にSoundfontを使う仕様なのは、私的にはあまり評価できません。理由を語ると長いのですが、早い話が、Soundfontには、MIDIを作曲者の意図通りに再生する保証がないのです。
本来、MIDIというのは、複数の楽器メーカーが定めたGM規格に基づく音源モジュール(SC-88など)で再生するのが最も正式です。Windows内蔵音源は、音質こそチープなものの、一応GM規格品から流用された波形データが、GM規格の音量バランスで収録されているのです。他方、Soundfont(特にSF2)は00年代ネット文化において発展した規格なので、若干アングラなデータが混ざっていたり、あるいは音量バランスや音色デザインなどは作成者個人の裁量に任されている部分があります。
別に、Soundfont自体を批判したいわけではありません。ほとんどのSoundFontはWindows内蔵音源よりよほど高音質です。しかし、高音質であることと、高品質であることは違います。Simutransには多くの作者が提供したBGMのMIDIデータが収録されており、それらを作者の意図通りに、あるいは、極力原型を残した状態で再生する為の規格としては、極力GM規格に近い音源を使うべきだと思うのです。
たとえば、現在Simutransに同梱されているPCLite.sf2は、MusescoreというOSSに同梱されているものなので、権利面はさすがに大丈夫でしょう。しかし、音量バランスはWindows内蔵音源とは大きく異なるため、一部のBGMはまったくバラバラの音量で演奏されてしまいます。全53曲中5曲くらいは、ピアノが音割れしたはずです。3曲くらいは、メロディーがほとんど聞こえない音量だったはずです。
私はさきほど「作者の意図通りのMIDI再生」と述べました。作者の意図、という言い方をすると、少し理想主義的に感じる方もいるかもしれません。しかし、仮にあなたが作曲する人だったとしましょう。「Steamに上がっているゲームのデフォルトBGM」が、音割れとか、メロディーが聞こえないとか、何曲もそういう状態で再生されていて、それが数年間も放置されてるゲームに対して、自作のBGMを提供しようと考えるでしょうか……。
本来、SimutransがSoundfont対応したことはハッピーなことです。長らく放置されてきたBGM再生機能にテコ入れが入ったことで、Simutrans BGMへの注目度は一躍高まりました。もしかしたら、私が2018年にBGM提供したことも、きっかけの一つにはなったかもしれないですしね。
しかしながら、現実には今の状況があるわけで、それなら極論、デフォルト再生エンジンをWindows内蔵音源に戻したほうが良かったのでは、と思ってしまいます(Soundfontはオプション選択肢として残せば良いわけですし)。
先に述べた通り、私のMIDIが正常に再生できないのは、99%私の責任です。私が出したMIDIが規格違反なせいです。しかし、規格通りに作られたとみられるほかの48曲まで音量バランスが崩れているというのは、申し訳ないですが、開発陣が(作曲者に相談もせず勝手に)MIDI再生音源を変更したことに責任があるでしょう。
じゃあどうすべきか、という話になるのですが、正直、きれいな代案は挙げられません。
「BGMをWAV/MP3形式にする」と提案されている方もいます。確かにMIDIは古く時代遅れの規格ですし、環境依存で面倒な点も多々あります。
しかしながら、「MIDIをWAV/MP3にする」とは、『変換』というより『編曲』を意味します。誤解を恐れずに言えば、ベートーベンの書いた五線譜を、一枚のCDにするようなものです。もちろん、Timidity++などを使って機械的に変換することも技術的には可能ですが、そうするくらいなら、ユーザー側で音源やSoundfontの差し替えが効く現状のほうが、かえって品質コントロールがしやすいと思います。
理想を言えば、SimutransのBGMをWAV/MP3にするために、一度MIDIの著作権まわりをクリアにした上で、極力GM規格を再現できる音源を入手し、DAWを駆使して取り組めればベストです。私個人的には全然やりたいのですが、53曲という曲数は一人のアマチュアがやるにはあまりにも多いです。最低でもあと2人くらいは、MIDI規格に精通し、かつDAWを扱える人間を集めたいものですが、試しにTwitterで話題に挙げてみたところ、案の定反応なしでした。
一応、自分がWAV/MP3化するにあたっては、この程度のクオリティになるかな、という試作例を挙げておきます。3曲分作るのに所要3時間弱でした。原曲のニュアンスを全部くみ取れている訳では無いですが、少なくとも「まるで別物」というほどではないと思います。
あるいは、非常に折衷的な案を挙げますが、Windows内蔵音源と、Soundfontと、WAV/MP3音源とを、すべて混在して再生できるようにするのが、最も犠牲は小さいでしょう。しかし、当然ながら、曲ごとに音質・音量のばらつきは著しいものになります。それはそれで、ゲームBGMの質としてはいかがなものでしょうか。
今の状況がよくない! と主張してみたはものの、私自身、答えは出ておりません。
本家フォーラムで一言だけ問題提起はしてみたものの、私の代わりに華麗に問題解決してくれる人が現れるはずもないのですよね。
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